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アラブ音楽についての良くあるご質問



アラブ音楽のFAQ!?です。項目で飛べるようになってます。
ご質問はこちらへどうぞ。


アラブ音楽の代表的な国は?
アラブ音楽の聴きどころは?
アラブ音楽には和音がないの?
アラブ音楽は単旋律?さみしくない?
アラブ音楽にアンサンブルはあるの?
合奏はユニゾン?単調じゃない?
どんなところで演奏されているの?
ウードのことを古楽器という人がいるけど?
ナイのことを「ナーイ」と書いてあったけど?
アラブの「ナイ」とトルコの「ネイ」は別のもの?
アラブ音楽とトルコ音楽の関係は?
アラブ古典音楽とアラブ・ポップスの関係は?
トルコ古典音楽とトルコ民謡の関係は?
ウードと日本の琵琶は親戚?
カワラってどんな楽器?
カワラとナイは同じもの?
アラブ音楽に独自の音名は?
チュニジア楽派?!
'udの ' は何の意味ですか?
ウードとウッド(英語のwood)は関係ある?
タクスィームは自由リズム?
アラブ音楽は反復的か?
アラブ音楽には楽譜があるの?
アラブ音楽について教えて下さい。




Q : アラブ音楽の代表的な国は?
A : エジプト、イラク、シリア、レバノン、チュニジア、アルジェリア、モロッコなど、それにアラブ音楽とは言えないけど、とても近い関係としてトルコ、ちょっと遠くなるけどイランも挙げたいところです。アラブ音楽、トルコ音楽、イラン音楽、そしてインド音楽は、それぞれ歴史のどこかで共通基盤を持ってます。



Q : アラブ音楽の聴きどころは?
A : 微妙な音程を含む、論理的かつ情緒豊かなメロディ、ダイナミックで洗練された多彩なリズム、極めて味わい深い楽器の音色、即興演奏の醍醐味など。歌をもっとも大切にします。



Q : アラブ音楽には和音がないの?
A : 以前から和音は存在しますが、機能和声がありません。和音はあくまで装飾として部分的に使われます。今日では和声進行をともなう編曲も少なくありませんが、これらはオーセンティックなものとは見なされてません。和音の響きと微妙な音程はしばしば対立し、伝統的な
マカームの繊細さが失われるという批判も少なくありません。

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Q : アラブ音楽は単旋律?さみしくない?
A : 西洋音楽の用語で言えばそうなっちゃうけど、西洋音楽のように、和音があって、ベースラインやオブリガートがあって、という枠の中で、メロだけになっちゃったら、そりゃさみしいかも。でもアラブ音楽の場合は、そのメロの仕組みにいろいろ多彩なワザがあるのです。だてに長い歴史があるわけではありません。



Q : アラブ音楽にアンサンブルはあるの?
A : はい。2、3人から、数10名のオーケストラまで、合唱付きならもっと多いです。古典音楽の基本的なアンサンブルは、ウード、カーヌーン、ナイ、バイオリン、レクのクインテットで、このような小編成をタフト(takht)といいます。これらにはしばしばチェロ、コントラバス、ダルブッカなどが付け加えられます。



Q : 合奏はユニゾン?単調じゃない?
A : ユニゾンではありません。一緒に同じメロディーを演奏しますが、各々がその都度即興的にそれぞれの楽器にあった装飾をつけたり、独自にメロディーのバリエーションを作ります。ヘテロフォニーという言葉もありますが、これも西洋音楽の分類に過ぎず、ぜんぜんしっくりきません。単調に聞こえるのは、単に耳に馴染みがないからです。なんでも知らないことは区別が付かないものです。



Q : どんなところで演奏されているの?
A : コンサートホール、ライヴハウス、テレビスタジオ、イベント会場、ホテル、レストランその他、西洋音楽の場合と変わりません。

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Q : ウードのことを古楽器という人がいるけど?
A : 古楽器というのは「今は使われていない」ということですかね。だったらウードは現役ですから古楽器じゃないです。



Q : ナイのことを「ナーイ」と書いてあったけど?
A : どちらでも良いと思いますが、カタカナの「ー」に似つかわしい長さとは思えません。この「ー」は、アラビア語のカタカナ表記の整合性から来たものだと思われますが、私は「ナイ」と表記しています。この「ー」が半分くらいの長さなら、かまわないんですけどね。ただし、ルーマニアのパンパイプ「ナイ」と区別するためにアラブの「ナーイ」と表記しようと言うのであれば、これはとても疑問です。
他にも「ウード」「ウド」「ダルブッカ」「ダラブカ」などいろいろあって、煩雑ですが、私の場合は、経験上なじみやすい表記をとっています。
カタカナ表記については、それを日常的に使用しているか否かで、観点が違うようですね。



Q : アラブの「ナイ」とトルコの「ネイ」は別のもの?
A : これは発音が違うだけで、まったく同じ言葉です。もちろんアラブの楽器とトルコのそれとでは、若干構造が違いますが(トルコには傘状の歌口があったり、第3孔の調律が違うし、飾りもついてたりする) 同じ概念をさしていることには変わりありません。したがって、アラブ人は「アラブのナイ」「トルコのナイ」と言い、トルコ人は「トルコのネイ」「アラブのネイ」と言ってます。ただし「(アラブの)ナイ」「(トルコの)ネイ」のように、カタカナ表記の違いで種類を言い分けようとすることには大きな疑問を感じます。もっとも実際それら二つの音楽はかなり違うので、音色や表現に関しては別の楽器とも言えるでしょう。

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Q : アラブ音楽とトルコ音楽の関係は?
A : ひとことでは言えない深い関係があります。こと古典音楽(クラシック)に関しては、ほとんど兄弟分といっていいジャンルです。ちゃんと区別しなければいけないものもあるけど、私なんか実際にはほとんど分け隔てなく捉えてる部分もあります。詳しいことは
アラブ音楽ってなに?で。



Q : アラブ古典音楽とアラブ・ポップスの関係は?
A : 関係は大アリです。クラシック、ポップス、民謡、ダンス音楽とどれも同じアラブ音楽の旋法体系とリズム体系に基づいてます。だから、まずクラシックを知れば、ポップスもわかる、というわけ。もちろん、理論なんか知らなくてもポップスは楽しめるけど、知ればまた新しい発見があるかもね!!



Q : トルコ古典音楽とトルコ民謡の関係は?
A : これは難しい問題です。たしかに共通点は多々あるのですが、トルコでは古典音楽を「シャルク(アラブ音楽のこと)」と呼び、民謡やアシュック(吟遊詩人)の音楽を「チュルク(トルコ音楽のこと)」と呼んではっきり区別しているそうです。例えばサズ奏者から見れば、シャルクはトルコの音楽じゃないそうです(サズ奏者の藤井良之氏による)。アラブのそれとは違って、トルコではかなり遊離した存在のようです。

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Q : ウードと日本の琵琶は親戚?
A : ウードがヨーロッパに伝わってリュートになったのは、事実として認められてます。しかし中国大陸に伝わってピパ(中国の琵琶)になっというという説、またはウードの祖先とされるペルシャのバルバトが中国大陸に伝わったと言う説に関しては、ヨーロッパの例ほど確かではないようですね。日本の琵琶は大陸から伝わってきたと言われているので、そういう意味では可能性として否定できないでしょう。 でも、楽器としての特徴はそんなに似てないですよ。形もぜんぜん違うし。音色や奏法なんかにいたっては、関係ないって感じ。



Q : カワラってどんな楽器?
A : カワラはカスバ、カサバなどとも言います。ナイと同じように葦で出来ているノンリードの管楽器です。いわゆる民謡笛といったところです。やっぱりナイと同様、斜めに構えます。カワラは民謡楽器なので、アマチュアがいいかげんに吹いてるケースも見かけますが、本気でやろうと思ったらすごく難しい楽器です。ズルナ(オーボエの祖先)みたいに循環呼吸法(息が途切れないように、常に吸いながら吹く奏法)で演奏する人もいます。奏法的にはポルタメントやピッチ・ベンドを多用するので、その音色はとても甘美で哀愁があり、感動的です。エジプトにはカワラの第一人者で、その名もイブラヒム・フェトヒ・カワラという人がいます。



Q : カワラとナイは同じもの?
A : 違いますよ。基本の構造は同じだけど、ナイの手孔(指孔)が半音階的に並んでるのに対して、カワラは手孔が全音階的に並んでます。つまり同じキーの楽器なら、カワラの方が手孔の位置が離れてて、逆に管長は短くて径が太いです。ナイはクラシックの楽器なので、より厳密な音程が求められ、手孔の半音階的な配置はこのジャンルに適切です。一方カワラは民謡やポップスで使われるので、クラシックほどいろいろな
マカームを演奏したりはしませんが、全音階の配置で実際は音程をいろいろ吹き分けなければいけないので、より耳に頼ることになります。

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Q : アラブ音楽に独自の音名は?
A : 伝統的な呼び名があります。ラスト、ドカー、スィカなどマカーム名にもなってます。でも通常はドレミファソラシドを使います。これは歌いやすいからです。ただし、いわゆる「移動ド」のような使い方はしません。また、実際に「ファ」と言ったときに、FaなのかFa#なのかは敢えて言いません。なぜかと言えば、必ずいずれかの
マカームの上での話だから、わざわざ言う必要がないのです。もっともヨーロッパの唱法も同様ですが。
もともとドレミ自体がアラビア語という説もあります。




Q : チュニジア楽派?!
A : チュニジア音楽はアラブ音楽の一楽派で、カイロやバグダッドが中央の楽派とすれば、チュニジアのそれは、ローカル楽派の代表と言っていいでしょう。ところがなぜか一般にモロッコ、アルジェリアと一緒にして「マグレブ楽派」というふうに呼ばれています。でも、その三つは、いっしょくたにされるほどは似てません。私たちはここであらためて、「チュニジア楽派」という呼称を広めたいと思ってます。



Q : 'udの ' は何の意味ですか?
A : 子音の発音を表わします。アラビア文字18番目の「アイン」で表記される、喉の奥を使って出す強い子音は、西洋のアルファベットでは表記できません。それをアポストロフィーをつけることで、なんとか表わそうとしています。ただ、それも煩雑なので、aoud、oud、udなど、いろいろ他にも表記の仕方はあります。

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Q : ウードとウッド(英語のwood)は関係ある?
A : 関係ないと思われます。たまたまアラビア語のウードにも木という意味があり、またカタカナで書くとなんとなく似て見えるので、混同されることがあるようですが・・・。 アラビア語の'ud の冒頭の音は、喉の奥を使って出す、強い子音です(前項参照)。実はその音は、日本語のウとはもちろん全然違いますし、英語のwとも似ても似つかない音なのです。
'udにアラビア語の定冠詞alをつけて発音すると、ちょうど「ルウド」とか「ラウド」といったような音に聞こえます。この al+'ud は、ヨーロッパのことばの中で、スペイン語のラウド(laud)や、フランス語や英語のリュート(luth, lute)などになりました。ですから、たとえば「ウードはリュートの語源である」と言うのは正しいのです。まさしく、ウードという楽器がヨーロッパに伝播し、リュートになったプロセスを、ことばも物語っているわけですね。



Q : タクスィームは自由リズム?
A : 4/4など定量のビートがないと言う意味で自由リズムと呼ぶのなら、そういってもいいですが、だからといって好き勝手にやっていいということじゃありませんよ。タクスィームには歌い回し、つまり言葉のリズム、または詩の韻律のようなものがあります。これがうまくハマってないと、せっかくのフレーズも機能しません。例えば、「こんにちは」を「こんーにちは」「こんにーちは」とやったら、意味が伝わりにくくなりますね。自由リズムという言葉は誤解を呼ぶので、私は使いません。



Q : アラブ音楽は反復的か?
A : アラブ音楽は、古典からポップスに至るまで、たいがいダンサブルなビートがあります。そしてメロもフォルクロリックなものになればなるほどリフ的になり、そこをいえば、たしかに「反復的」な音楽です。しかし、そういう風にいっちゃえば、他のジャンルだっておんなじですよね。アラブ音楽では、フレーズを繰り返す場合、かならずなんらかのヴァリエーションを行います。これはタクスィームについても同じで、ただ漫然と同じことを繰り返すのは「つまらない演奏」ということになってしまいます。逆にしゃれたヴァリエーションが出てくると、賞賛されるというわけ。そういった位相では、すくなくとも単純な反復は好まれない、と言えますね。



Q : アラブ音楽に楽譜はあるの?
A : はい、今日では西洋式の五線譜を使います。また、今日の作曲家には楽譜上に作曲する人も多いようです。微小音程を示すいくつかの特別な臨時記号も使います。ただし、本質的にはアラブ音楽は口伝の芸術。もともと長い間師匠から弟子へと口伝で伝えられてきたものです。五線譜は便利ですが、最大の問題は楽譜に書き留められることによって、本来アラブ音楽が持つフレキシビリティが損なわれてしまうことです。ひとつのフレーズは必ずいくつかのヴァリエーションを持ってるし、また演奏家が即興的に新しいヴァリエーションを付加するのが常で、私たちはこれらをひとつのヴァリエーション・グループとして認識しています。楽譜ではそういった自由度は表現できないので(出来ても死ぬほど煩雑になって実用性はないでしょうし)、とりあえずの基本として記譜することになります。ところがいったん書かれてしまうと、それを杓子定規に演奏するという事態が起こるので、演奏家は常に楽譜とは一定の距離を保っていないと、貧弱な演奏になってしまうので注意が必要です。
楽譜と口伝なんて話は大変なテーマなので、ここでは「五線譜も併用してます」というにとどめておきます。楽譜が便利なことも確かなので、硬直的にならないように気をつけながら、いい部分だけ積極的に用いるのが、合理的な方法だと思います。ただし、アラブ音楽においてはあくまで「楽譜は音楽ではない」ということです。



Q : アラブ音楽について教えて下さい。
A : もうすこし具体的にお尋ね下さい。




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